佐藤耳no耳

佐藤耳といいます。小さな詩のような物語を不定期で書いてゆきます。また、読めばなんだかすっきり?為になる?「きょうの呪文」もできれば頑張って更新したいな。いずれは小説とかも発表するかも、です。幻想的な文章、少し怪奇成分の混じったものが大好きなんですが、ホンモノのオバケは苦手だよ。写真、イラストはすべてフォトAC様、イラストAC様から。心より感謝しています。また規約に則って使用させていただいています。

魔法の笛と少女

ーー魔笛。モーツァルトのオペラにでてくる魔法の笛のことですが、笛には人の心を惑わせる、妖しくも不可思議な力が隠されています。 ハーメルンの笛吹きダンディだって、そうです。ふらりとやってきた笛吹きダンディの奏でる調べに誘われ、多くの子どもが攫…

チョコレート・カッシーニ

バレンタインデーに告白の手紙と一緒にチョコをもらった笹山くんですが、途方に暮れています。勿論嬉しかった。だって初めての告白だったもの。 百合子さんは可愛いというより優雅で可憐な女の子。そんな子からチョコを贈られたわけで、舞い上がってもよさそ…

ポケット君と猫のいない午後

夢さんと、バッハに導かれ、ポケット君に会いにゆくところ。ちなみに夢とバッハは揃って黄色い瞳の黒猫です。ポケット君は、人間だけどね。 で、ポケット君にはポケットがいっぱい。ジャケットやズボン、シャツにもポケットが縫い付けてあって、その数は10…

小惑星と女の子

ひとりぼっちでもないし、お友だちがいないわけじゃない。でもミキちゃんは、いっつも教室のソトばっかり、みてる女の子なのです。 彼女がもっか、観測中なのは、空をすかし、成層圏をすかし、熟してない林檎より、もっと青い宇宙の渚よりも遠い、冷たい宇宙…

檸檬(レモン)太郎が誕生します

お伽噺のキャラクターを演じてみたい、そんなふうに思うことがわたしにはあります。たとえばの話、一寸法師になり切るって、どんな気分かな? 長いこと昔話として語り継がれてきたキャラには、とんでもない力が秘められていたり、ふだんは感覚しない、奇想天…

ダリヤの花と口笛

そもそもの発端は、わたし自身に手紙を書いてみたいという願いからはじまったことでした。 なぜならいまのわたしは、本来のわたしから少しずれた位相にいて、わたしはわたしではなかったからです。 夏の白い、ふうわり風に吹かれる芙蓉の花をいとおしんでも…

夏の朝、宇宙卵を産む少年

君は男の子だっていうのに、いろんなものの卵を産んでは育てたい、と思う、まったくお母さんみたいな少年なんだね。 キラキラひかる緑の石や、かわいい動物のシールを集めたり、クッキーとかを焼く君が、いちばん愛してる色鉛筆はやっぱりピンク。 わたしな…

ペットボトルのなかの雲

できるだけ遅く歩く人がわたしです。スローモーな軽快さでいると万物もまた、ゆったり流れ、ペットボトルの水でさえ、悠然とした雲となります。 ボトルをかたむけ、水のかわりに雲を呑む。そうすると雲そのものが記憶してた、わたしたちと、この星の歴史が自…

わたしの庭に舞い降りる小鳥

ノッポにして飄々、スタイリッシュじゃないけど、黒のタキシードをさりげなくまとった少年が庭にやってきました。 庭師、のつもりでいるのかな? スコップまで手にした少年。よくよく見ると、彼は隣のクラスの井上くんでした。 少年はいいます。この男の子と…

アサガオは死に、蝶となって飛んでゆくのです

アサガオの開花を撮影した、すてきな自主映画をみたことがあります。朝、蕾から花がひろがり、夜にむかってしぼむ様子までを撮った映画です。 早回しで撮ったフィルムではありますが、花に小さな娘が坐っていたり、コロボックルみたいな子どもたちが歌をうた…

歩道橋の蜃気楼。そしてトマトとオレンジ。

トマトとオレンジ、どっちが好き?と訊かれても、わからないし、わたしには選ぶことはできません。 トマトっぽい子と、オレンジっぽい子がいて、ふたりとは親友なんだけど、いっつもあの子たち、喧嘩をするの。 でもオレンジの子は死んで、トマトの子は長い…

星の娘たち

ペパーミントの息でもって冷たい月を吐いたり、吸ったりしている女の子がわたしです。 心が氷になった晩のこと。星の豪雨が降りました。やがて星の雨がやんだ朝、うるわしい緑の大気であふれてる。 午前四時のビルの屋上。初夏の爽やかな自殺者は、きれいな…

空のこと忘れないよ、わたし

鳥の羽根を持ってるわたしが飛べなくて、持ってないキミが空を飛べるなんて、どうしてだろうね?と思っちゃう。 それにしてもおかしな話だよね。水中で羽搏くペンギンみたいに、キミは空にいるときだけは元気いっぱい。 おーい、と手をふるわたしを無視して…

雲の呪術師

なんでも心配してくるあの子は、雲の呪術師。雲をガラスの壜に閉じこめては、観察するのが日課です。 彼女は言ってた。ずっと雲をみていると、人間からみた雲じゃなく、雲からみた人間がみえてくるんだって。 呪術師のあの子自身が、いつしか壜のなかにはい…

砂場心理療法士のえみちゃん

砂場は海。わたしたちは船。ライバルは小学生で、わたしは日々、彼女と死闘を繰りひろげているのです。 だってわたしは、砂場心理療法士だから。夜明け前、ご近所の公園や、幼稚園の砂場にこっそり出かけては、侵入するのが仕事。 そんなわけで朝の砂場はご…

赤いお屋根の小さなお家と、夢みる骨

小さい子どもでしたけど、それでも野ねずみよりは大きかったわたしは、ある夜のこと、こんな夢をみました。 赤い三角のお屋根が特徴的な、とても可愛らしいお家があり、どうかきてください、と、そのお家自身がわたしのこと。招待してくれているのです。 お…

雨の水族館と、白いお馬

傘をさしたなら、かならずスカートのポケットにわたし、ニンジンをしのばせて、雨の水族館に出かけてゆきます。 ひんやりブルーの水槽のむこう、視線はおサカナをもスルーし、なぜか、湖と、湖畔にたたずむ白いお馬をみるのです。 雨のしずくが耳のなかで鳴…

星の涙と、プラネタリウム

プラネタリウムで眠ったわたしは、死んだお人形。きのうまでは、生きていたというのに。 きみと、サヨナラしてからです。天の川は涙の河となりました。星のひとつぶが濡れて光る涙のしずく。 プラネタリウムもまた、死んだ星の涙でできている。そのことをわ…

グルグルの秘密と火のダンス

意地悪をしてくるポルターガイストが好きだった、と言うと、みんなはとても変な顔をします。 彼女は幽霊。誰かれかまわず憑依をしては、わたしの髪を引っ張ったり、家具を動かしては困らせる。 でも彼女のこと、いとおしい。だって生まれることのなかった、…

アオゾラキカイ

雨が降ってきたというのに恋人は、約束してた楡の樹の下に、きょうもまた、やってきませんでした。 こんもり、傘みたいに緑がひろがる樹の下だったけど、土砂降りになったらわたしはびしょ濡れ。 だからロボットになることに決めました。赤さびた少女のロボ…

箱のなかの青い蝶々と、秘めやかなわたしの命

わたしのすべてを知りたがるきみへ。どうしても伝えておきたいことがあります。 いまはむかし。一千年前に生きた青い蝶々をおさめた、これもまた古い小さな箱に、わたしが眠っていることを。 この箱の由来については秘密にしておきますね。いまは黙ってわた…

ユージくんの青い海

生意気ざかりのユージくんは、わたしの弟です。この春、14歳になりました。 よくできた弟ですが、でも時には賢すぎ、むかむかすることもしばしば。 わたしたちあんまり似てないけど、ほんとに血がつながっているのかな。 ■ ねぇ、ユージくん。あなたはどこ…

きょうの呪文 木星のマリアさま。わたしを守って!

きみにも守ってくれる女の人がいることを知っていますか? これはジュピター、すなわち木星のマリアを召喚するための呪文です。 占星術が伝えるところによると、木星は、幸せをもたらしてくれる惑星です。それも十字架の上で命つきるその日まで、イエスさま…

虹を指し示す猫

コテージからみえる午前五時の海。潮騒がかおり、たっぷりとふくらんだ水平線が藍色にひろがります。 猫は誘います。ふたりですがすがしい砂浜をゆくと、遠くの沖合で雨が降っていたのでしょう。 夜明け前に雲は消え、洗ったばかりの緑の大気に海の虹がかか…

木星と金魚鉢

金魚鉢にお水を満たし、ふうわり、ゆうらり、鰭をうごかす彼女を放ちます。 紅いおべべを着た彼女は、銀色にひかるお水のなかで、とっても気持ちがいいみたい。 わたしも金魚鉢に飛びこんで、彼女と一緒に泳ぎたい、って思います。 ■ 金魚はよくても、人は金…

夜明けの梟(ふくろう)を恋のキューピッドに

魂を奪われた少年なんだ、と、夜明けにやってきた梟(ふくろう)が、わたしに囁きかけます。 瞳は美しいガラスでできている代償に、少年のみる色彩には音楽も、感情すらもない。 でも凍てついた氷の宮殿での生活に、ほかならぬ彼自身が傷ついているのでした…

涙になったウィッチドクター

あのころ、女の子だったわたしは、魔術的な力をふるう、お医者さまでした。 川の波立つまぶしさからは吉兆を、慰めは雨の涼しさから譲り受け、 青を制覇する雲の白さをうらなっては、小鳥やモンシロチョウを癒します。 わたしは、海からやってきた人魚。水を…

コンビニねずみを知っていますか?

コンビニねずみを知っていますか? 白いねずみだけど、ハツカネズミとはちがいます。 だっておめめがブルーで、赤くないねずみだもの。 ■ 海岸沿いの倉庫にねずみは暮らし、チーズを食べてた遥かなむかし。 いまレジ袋に生まれ変わって、食べものをつめこま…

月のエクトプラズムとアイスクリーム

人は死んだら雲となり、お月様にゆくことをわたし、知りました。 妹のゆう子はだから月の裏側にいるのかな?、と考えます。 ■七月に亡くなったゆう子は、アイスクリームの魔術が大の得意。 しかもコーンつきのヴァニラアイスを物質化しちゃうほどに。 なんに…

きょうの呪文 『ユニコーンと出会ったなら、ソーダ水をご馳走しなくちゃ』。

夢の中でしか会えないとおもっていたユニコーンと、ふいに遭遇してしまったなら、あなたはどうしますか?たとえばの話ですけど、街角で、だったり、カフェを出てすぐだったり、ユニコーンと鉢合わせしてしまったら、ソーダ水をご馳走することをおすすめしま…