佐藤耳no耳

佐藤耳といいます。小さな詩のような物語を不定期で書いてゆきます。また、読めばなんだかすっきり?為になる?「きょうの呪文」もできれば頑張って更新したいな。いずれは小説とかも発表するかも、です。幻想的な文章、少し怪奇成分の混じったものが大好きなんですが、ホンモノのオバケは苦手だよ。写真、イラストはすべてフォトAC様、イラストAC様から。心より感謝しています。また規約に則って使用させていただいています。

砂場心理療法士のえみちゃん

砂場は海。わたしたちは船。ライバルは小学生で、わたしは日々、彼女と死闘を繰りひろげているのです。
だってわたしは、砂場心理療法士だから。夜明け前、ご近所の公園や、幼稚園の砂場にこっそり出かけては、侵入するのが仕事。
そんなわけで朝の砂場はご馳走。砂場の痕跡から、この街にひそむ心理状態や神話をリーディングし、お祓いしたり、清めたりするのです。


f:id:morinomizuumi:20180719101034j:plain


砂場から街の心を占うわたし。砂山の形やトンネルを観賞し、プラスチックの車やじょうろ、指人形のカエルさんを発掘します。
心は深い海にも喩えられ、怪奇なフォルムの古代の鮫、ふしぎな甲羅の蟹、あるいは絶滅したモササウルスが潜んでいたりするので、注意しなきゃ。
砂場は幼子の心をうつす鏡にして、ピュアな子どもの精神の海は街ぜんたいの心とつながる。時には危険、時には甘いのが砂場です。



だけど、この街のもう一人の砂場療法士のえみちゃんは、小学生のくせしていっつもわたしを邪魔し、出しぬくの。彼女は朝一番で砂場を荒らす。
そんな彼女が、虹の入ったピーマンを発掘したという噂が流れ、わたしはちょっとしたパニック。だって闇に輝く虹は、街の心のコアだから。
ほっとくと、えみちゃんがこの街の心を乗っ取って、市長さんよりも偉い支配者になっちゃう。わたしは自転車で彼女を追っかけます。



とうとう追いつめたえみちゃんからピーマンを奪ったわたし。虹を解放すべく、ピーマンの中身をみると?……。
ありゃ、空っぽ。でも、えみちゃんは笑って、こう言うの。これはあなたを引き寄せる罠、そしてわたしの心が入ってる、と。
小学生の彼女はほっぺを赤らめ、はにかみ、瞳をキラキラさせながら、あの、お姉ちゃんとお友だちになりたい、と告白するのでした。