赤いお屋根の小さなお家と、夢みる骨
小さい子どもでしたけど、それでも野ねずみよりは大きかったわたしは、ある夜のこと、こんな夢をみました。
赤い三角のお屋根が特徴的な、とても可愛らしいお家があり、どうかきてください、と、そのお家自身がわたしのこと。招待してくれているのです。
お家に入るとわたしは、幾つかの骨を拾いました。たぶん人間の骨。わたしはそれを「夢みる骨」、とネーミングすることにしました。
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ほどなくして、赤いお屋根のお家の夢はあんまりみなくなったけど、あのお家で拾った骨の夢はよくみるようになりました。
「夢みる骨」は、まるでピーマンのよう。人生の大切な機会にかならず添えられるアクセントとして、わたしを導いてくれるのです。
そう、夢のなかでわたしは、テーブルに骨をひろげ、占いをしていたのです。骨は人生のピンチを、何度だって救ってくれました。
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やがて野ねずみよりはだいぶ大きくなったわたしです。そんなわたしも少女から大人に成長し、恋の季節を迎えるようになりました。
きみと出会い、恋に落ち、初めてきみの家に行ったときのこと、わたしはひどく驚いたことを覚えています。
だって、わたしの眼に飛びこんできたのは、あの赤いお屋根の、とても可愛らしい小さなお家でしたから。そして骨だった、きみ。
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夢のなかでは、時間は、未来から過去にむかって流れることを、わたし、知りました。魂はあのとき、柘榴みたいに熟していたのね。
これからはふたりが、ほんとうの骨になるその日まで、時には甘く、時には苦いピーマンとして、おたがい、寄り添って生きてゆきましょう。
あの三角の、赤いお屋根がいま、わたしの自慢のお家となりました。かわいらしくも、懐かしい、いとしいお家で。ずっと、ずっと、ね。