佐藤耳no耳

佐藤耳といいます。小さな詩のような物語を不定期で書いてゆきます。また、読めばなんだかすっきり?為になる?「きょうの呪文」もできれば頑張って更新したいな。いずれは小説とかも発表するかも、です。幻想的な文章、少し怪奇成分の混じったものが大好きなんですが、ホンモノのオバケは苦手だよ。写真、イラストはすべてフォトAC様、イラストAC様から。心より感謝しています。また規約に則って使用させていただいています。

アオゾラキカイ

雨が降ってきたというのに恋人は、約束してた楡の樹の下に、きょうもまた、やってきませんでした。
こんもり、傘みたいに緑がひろがる樹の下だったけど、土砂降りになったらわたしはびしょ濡れ。
だからロボットになることに決めました。赤さびた少女のロボットは傘もなく、冷たい瞳で彼を待つのです。

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待ちぼうけの合間に見る夢は、壊れたマシンの夢でした。それも機械のパーツだけが落ちていて少しだけ、動く。
空から素直さが消えてしまった世界。雨ばかりが降るここで、拾った部品はアオゾラキカイの、とても大切なハート。
とうとう素直さがわからなくなったわたしは、涙ばかりをこぼすロボットになってしまいました。


たぶんちょっと前までのわたしなら知っていたはず。アオゾラキカイを動かす素直さの部品の秘密を。
素直さは思いやりと、育むちから。たねから芽吹き、葉っぱをつらぬき、宇宙の闇に花を咲かせる神秘のちから。
青空が動かなくなってしまったのは、何より空から、わたしから素直さが消えてしまったから。


人はだれもが空の一部分なんです。みんなのハートの奇跡の部品が、アオゾラキカイの華やぐ素直さをつくってる。
だから、もうわたしは待つことをやめました。晴れ上がった空の下、素直になってどんどん歩いてゆこう。
そうしてわたしがいなくなった樹の下では、ひとりぼっちになった彼が、つまらなそうに赤さびてゆくのです。