2018-06-01から1ヶ月間の記事一覧
わたしのすべてを知りたがるきみへ。どうしても伝えておきたいことがあります。 いまはむかし。一千年前に生きた青い蝶々をおさめた、これもまた古い小さな箱に、わたしが眠っていることを。 この箱の由来については秘密にしておきますね。いまは黙ってわた…
生意気ざかりのユージくんは、わたしの弟です。この春、14歳になりました。 よくできた弟ですが、でも時には賢すぎ、むかむかすることもしばしば。 わたしたちあんまり似てないけど、ほんとに血がつながっているのかな。 ■ ねぇ、ユージくん。あなたはどこ…
きみにも守ってくれる女の人がいることを知っていますか? これはジュピター、すなわち木星のマリアを召喚するための呪文です。 占星術が伝えるところによると、木星は、幸せをもたらしてくれる惑星です。それも十字架の上で命つきるその日まで、イエスさま…
コテージからみえる午前五時の海。潮騒がかおり、たっぷりとふくらんだ水平線が藍色にひろがります。 猫は誘います。ふたりですがすがしい砂浜をゆくと、遠くの沖合で雨が降っていたのでしょう。 夜明け前に雲は消え、洗ったばかりの緑の大気に海の虹がかか…
金魚鉢にお水を満たし、ふうわり、ゆうらり、鰭をうごかす彼女を放ちます。 紅いおべべを着た彼女は、銀色にひかるお水のなかで、とっても気持ちがいいみたい。 わたしも金魚鉢に飛びこんで、彼女と一緒に泳ぎたい、って思います。 ■ 金魚はよくても、人は金…
魂を奪われた少年なんだ、と、夜明けにやってきた梟(ふくろう)が、わたしに囁きかけます。 瞳は美しいガラスでできている代償に、少年のみる色彩には音楽も、感情すらもない。 でも凍てついた氷の宮殿での生活に、ほかならぬ彼自身が傷ついているのでした…
あのころ、女の子だったわたしは、魔術的な力をふるう、お医者さまでした。 川の波立つまぶしさからは吉兆を、慰めは雨の涼しさから譲り受け、 青を制覇する雲の白さをうらなっては、小鳥やモンシロチョウを癒します。 わたしは、海からやってきた人魚。水を…
コンビニねずみを知っていますか? 白いねずみだけど、ハツカネズミとはちがいます。 だっておめめがブルーで、赤くないねずみだもの。 ■ 海岸沿いの倉庫にねずみは暮らし、チーズを食べてた遥かなむかし。 いまレジ袋に生まれ変わって、食べものをつめこま…
人は死んだら雲となり、お月様にゆくことをわたし、知りました。 妹のゆう子はだから月の裏側にいるのかな?、と考えます。 ■七月に亡くなったゆう子は、アイスクリームの魔術が大の得意。 しかもコーンつきのヴァニラアイスを物質化しちゃうほどに。 なんに…
夢の中でしか会えないとおもっていたユニコーンと、ふいに遭遇してしまったなら、あなたはどうしますか?たとえばの話ですけど、街角で、だったり、カフェを出てすぐだったり、ユニコーンと鉢合わせしてしまったら、ソーダ水をご馳走することをおすすめしま…