佐藤耳no耳

佐藤耳といいます。小さな詩のような物語を不定期で書いてゆきます。また、読めばなんだかすっきり?為になる?「きょうの呪文」もできれば頑張って更新したいな。いずれは小説とかも発表するかも、です。幻想的な文章、少し怪奇成分の混じったものが大好きなんですが、ホンモノのオバケは苦手だよ。写真、イラストはすべてフォトAC様、イラストAC様から。心より感謝しています。また規約に則って使用させていただいています。

涙になったウィッチドクター

あのころ、女の子だったわたしは、魔術的な力をふるう、お医者さまでした。
川の波立つまぶしさからは吉兆を、慰めは雨の涼しさから譲り受け、
青を制覇する雲の白さをうらなっては、小鳥やモンシロチョウを癒します。
わたしは、海からやってきた人魚。水を静かに慕い、占い、ひんやりと操ることができました。


f:id:morinomizuumi:20180608100245j:plain



あろうことか、そんなわたしが病気に罹ったのは、はじめて人の病を癒そうとしたから。
恋する少年の苦しみをやわらげたかっただけなのに、いつしか彼の甘いせせらぎに溺れてた。
やっぱりアンデルセンの童話みたいに、人魚の恋愛は命がけなのでしょうか?
心の鱗を禁断の恋は焦がし、わたしを焼き殺そうとするのです。


そんなある日、魔法つかいのお婆さんの言葉を思い出す。恋する人魚は死ぬしかない、と。
わたしは彼のながす涙にこの身を投じ、みずから泡となって命を絶ちました。
涙の川で水を呑み、永遠にわたしを冷やしてくれる王国で、あのころ、女の子だったわたしは、涙のひとしずくとなりました。
哀しみに暮れてやまない少年の川とともに、彼が死ぬまで生きつづける人魚姫。それがわたしなのです。