佐藤耳no耳

佐藤耳といいます。小さな詩のような物語を不定期で書いてゆきます。また、読めばなんだかすっきり?為になる?「きょうの呪文」もできれば頑張って更新したいな。いずれは小説とかも発表するかも、です。幻想的な文章、少し怪奇成分の混じったものが大好きなんですが、ホンモノのオバケは苦手だよ。写真、イラストはすべてフォトAC様、イラストAC様から。心より感謝しています。また規約に則って使用させていただいています。

月のエクトプラズムとアイスクリーム

人は死んだら雲となり、お月様にゆくことをわたし、知りました。
妹のゆう子はだから月の裏側にいるのかな?、と考えます。

f:id:morinomizuumi:20180603091733j:plain

七月に亡くなったゆう子は、アイスクリームの魔術が大の得意。
しかもコーンつきのヴァニラアイスを物質化しちゃうほどに。
なんにもない空中からアイスクリームを取りだせるのは、
白い霧や、まばゆいばかりの積乱雲を材料にしてるから。
お姉ちゃんにも簡単にできるよ、と、あの子、笑ってくれました。



八月。正午の月から爽やかな風が吹いてきて、ゆう子を思いだします。
お昼の月はうっすらとした気体となり、まるで半分、雲でできているかのよう。
そんなとき、まったく雲みたいな月からアイスクリームをこしらえるわたし。
月のエクトプラズムですから、ゆう子の成分もきっと混じっているよね。



ふと横を見ると、アイスを食べるわたしのかたわらで、
「お姉ちゃん、わたしの分も生きてね」
と、すきとおったゆう子は微笑んでくれるのです。