佐藤耳no耳

佐藤耳といいます。小さな詩のような物語を不定期で書いてゆきます。また、読めばなんだかすっきり?為になる?「きょうの呪文」もできれば頑張って更新したいな。いずれは小説とかも発表するかも、です。幻想的な文章、少し怪奇成分の混じったものが大好きなんですが、ホンモノのオバケは苦手だよ。写真、イラストはすべてフォトAC様、イラストAC様から。心より感謝しています。また規約に則って使用させていただいています。

グルグルの秘密と火のダンス

意地悪をしてくるポルターガイストが好きだった、と言うと、みんなはとても変な顔をします。
彼女は幽霊。誰かれかまわず憑依をしては、わたしの髪を引っ張ったり、家具を動かしては困らせる。
でも彼女のこと、いとおしい。だって生まれることのなかった、もう一人のわたしなんだもの。きっとわたしたち、そっくりの顔をしているかもね。


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マッチ箱、って知ってるかな? アンデルセンの童話にもでてくる、マッチ箱がお仏壇の前にありました。
いまはマッチなんて使わないから、ホコリをかぶっていたのです。一本、箱から取りだしてマッチをすってみると……。
ゆらめく炎のなか、憎たらし気に笑うあの子が手をふっています。いままで姿は見えなかったのに。けど、火は燃え尽き、少女も消えちゃう。



マッチで火をつけるたび、あらわれる女の子。それはきっと、特別な魔法のマッチ。火は空気を対流させ、炎は渦となり、彼女はグルグル踊っては消える。
火だけじゃなく、雲や、お風呂、ストローでかきまぜるジュース、それにカタツムリにだって渦ができるよね? 渦は生まれては死に、死んではまた生まれるを何度だってリフレイン。
グルグルの生まれてから死ぬまでを、わたし、とっても丁寧な態度で取りあつかうようになりました。すごく厳粛な気分でね。



マッチの火の短い生涯のあいだに何度もグルグル輪廻転生をくりかえすうち、とうとうマッチは最後の一本となりました。
わたしが死ぬ日までそのマッチを大切に保管しておこうと思います。火葬にするときにお願い、最後の一本で火をつけてください。
彼女はこの世にはいないわたしの妹で、しかも双子。わたしにそっくりな顔して、わるだくみに夢中だったけどね。



そうして、あれから時がたち、お葬式の日はやってきます。炎の渦のなか、わたしとあの子はともにダンスを踊り、もう境目がないくらい一緒になって、やがて渦は消えるのです。