佐藤耳no耳

佐藤耳といいます。小さな詩のような物語を不定期で書いてゆきます。また、読めばなんだかすっきり?為になる?「きょうの呪文」もできれば頑張って更新したいな。いずれは小説とかも発表するかも、です。幻想的な文章、少し怪奇成分の混じったものが大好きなんですが、ホンモノのオバケは苦手だよ。写真、イラストはすべてフォトAC様、イラストAC様から。心より感謝しています。また規約に則って使用させていただいています。

星の涙と、プラネタリウム

プラネタリウムで眠ったわたしは、死んだお人形。きのうまでは、生きていたというのに。
きみと、サヨナラしてからです。天の川は涙の河となりました。星のひとつぶが濡れて光る涙のしずく。
プラネタリウムもまた、死んだ星の涙でできている。そのことをわたし、きょう初めて知りました。


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死んだ小鳥、死んだ雲、死んだ糸車、死んだ乙女。すべては死んで動かなくなった星座の哀しき名称。
死んだ涙は流れ星にもならなくて、笑うことすらままならず、宇宙の暗がりをさまようわたし。
これからもプラネタリウムのなか、めざめることのない永遠の、人工の夜を泣きじゃくりながら眠るというのでしょうか?



すると、いつしかシートの隣には、むかし、可愛がっていたお人形が坐っていて、わたしに語りかけてくるのです。
ーーおかしいね、ゆみちゃんが死んだお人形になってしまうなんて。わたしは生きているお人形だというのに。
それに、ゆみちゃんはお人形じゃなくて、ニンゲンなんだよ。それも生きている人間。羨ましいな、って。



人間になりたかったお人形に叱られて、星座は命と、まばゆいばかりの光を取り戻しました。さあ、プラネタリウムの夜明けがきたよ。
童心にかえったわたしは、お人形を抱えて外に飛び出します。夏のシャワーを浴び、変なスキップをして照れ笑い。
お人形が生きているかぎり、わたしもまた、生きる。森も、星も、草も、そして涙にかきくれるプラネタリウムでさえも。