星の涙と、プラネタリウム
プラネタリウムで眠ったわたしは、死んだお人形。きのうまでは、生きていたというのに。
きみと、サヨナラしてからです。天の川は涙の河となりました。星のひとつぶが濡れて光る涙のしずく。
プラネタリウムもまた、死んだ星の涙でできている。そのことをわたし、きょう初めて知りました。
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死んだ小鳥、死んだ雲、死んだ糸車、死んだ乙女。すべては死んで動かなくなった星座の哀しき名称。
死んだ涙は流れ星にもならなくて、笑うことすらままならず、宇宙の暗がりをさまようわたし。
これからもプラネタリウムのなか、めざめることのない永遠の、人工の夜を泣きじゃくりながら眠るというのでしょうか?
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すると、いつしかシートの隣には、むかし、可愛がっていたお人形が坐っていて、わたしに語りかけてくるのです。
ーーおかしいね、ゆみちゃんが死んだお人形になってしまうなんて。わたしは生きているお人形だというのに。
それに、ゆみちゃんはお人形じゃなくて、ニンゲンなんだよ。それも生きている人間。羨ましいな、って。
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人間になりたかったお人形に叱られて、星座は命と、まばゆいばかりの光を取り戻しました。さあ、プラネタリウムの夜明けがきたよ。
童心にかえったわたしは、お人形を抱えて外に飛び出します。夏のシャワーを浴び、変なスキップをして照れ笑い。
お人形が生きているかぎり、わたしもまた、生きる。森も、星も、草も、そして涙にかきくれるプラネタリウムでさえも。